はじめに:増やせるのに、最後に負ける人がいる
10万円を入金し、0.1ロットからスタートして、15日間で10万円を100万円にしてしまう。
そんな“増やす力”を持つ人がいます。
ところが不思議なことに、資金が増えたあと、ある段階(50万円、80万円、130万円など)に到達すると、コツコツ築いた資金を一気に溶かしてしまう。そして次の挑戦でも、また同じように増やして、同じように溶かす。まるで「崩壊するポイント」が決まっているかのように。
この現象は、単なる運の悪さではありません。
多くの場合、心理と運用設計が噛み合って、“崩壊が起きやすい状態”を自分で作ってしまっているのです。
この記事では、なぜそのパターンが繰り返されるのかを掘り下げ、最後に「同じ崩壊を防ぐための具体的な仕組み」を提示します。
1. まず結論:資金を失う原因は「手法」ではなく「状態の変化」
その人は、10万円から100万円に増やせる時点で、一定の優位性(タイミング、相場観、実行力)を持っています。
つまり、失敗の原因は「勝てない手法」ではないことが多い。
問題は、資金が増えたことで起きる 状態の変化 です。
-
資金が増える
-
心に余裕が出る
-
自信が過信に変わる
-
ルールが「守るもの」から「守らなくても勝てるもの」へ変質する
-
ロット増・ポジション増・損切り遅延が始まる
-
1回の事故が、それまでの勝ちを全て消す
-
「また増やせる」と思い、同じ道を繰り返す
これは偶然ではなく、勝った後ほど崩れやすい設計になっているときに起きます。
2. なぜ資金が増えるとルールを破るのか:心理メカニズムの分解
2-1. “余裕”は規律の味方ではなく、時に敵になる
資金が10万円のとき、負けは痛い。
だから人は慎重になるし、恐怖がブレーキになる。
しかし資金が50万、80万、130万と増えると、負けの痛みが相対的に薄れます。
すると脳はこう誤認します。
-
「少しくらいミスしても大丈夫」
-
「自分はうまい」
-
「今の自分なら、ルールに縛られなくても勝てる」
ここで重要なのは、人は“危険が消えた”と感じた瞬間に、危険な行動を増やすという点です。
余裕は、規律を保つ燃料にもなりますが、同時に“例外”を許す免罪符にもなります。
2-2. 連勝は「技術」だけでなく「万能感」を作る
短期間で資金を増やすと、成功体験が密になります。
密な成功体験は、自信だけでなく**万能感(自分は特別だ)**を作りやすい。
万能感が出ると、ルールはこう見え始めます。
-
「損切り? 今日は要らないかも」
-
「いつもより3倍張っても、読みが合ってるから大丈夫」
-
「ポジション3つ持っても、相場は読めてる」
そして、この“万能感のピーク”が、崩壊の直前であることが多いのです。
2-3. 勝ち金は「自分のお金」ではなく「相場からもらったボーナス」になりやすい
増えた分のお金は、心理的に“元手”と同じ重みで感じにくくなります。
すると行動が荒くなります。
-
10万円の損失:生活に刺さる
-
増えた中の10万円の損失:「まあ、また取れる」
この感覚が、事故のサイズを増やします。
3. 資金曲線が崩壊する“運用構造”がある
心理だけでなく、構造(損益分布)も見逃せません。
「コツコツ増やして、1回で溶かす」人の多くは、損益分布がこうなっています。
-
小さい利益を何度も積む(勝率は高い)
-
ただし、負けるときの損失が大きい(損切りが遅い/しない/ナンピン/ポジ増)
-
つまり、たまに巨大損失が出る設計になっている
これを現場の言葉で言うと、
「普段はうまい。でも“事故”を止める装置がない」 です。
そして資金が増えるほど、その事故の潜在エネルギーが増します。なぜなら、増えた資金は「張れる量」を増やし、張れる量は「事故の最大損失」を増やすからです。
4. なぜ50万・80万・130万のような“節目”で溶かすのか
ここが重要です。多くの人に「溶かす金額の節目」があります。理由は複合的です。
4-1. 節目は“自分への評価”を変える
50万、100万、130万は、心理的に「到達した感」が出やすい。
到達感は、次の2つを誘発します。
-
慢心(守らなくてもいける)
-
解放(少し羽目を外したい)
守りの姿勢が崩れるのは、このタイミングです。
4-2. その金額まで増える過程で「守らなくても勝てた例外」が混ざる
連勝中に、たまたま「損切りを遅らせたのに助かった」「本来ならルール違反だったが勝てた」経験が混ざります。
すると脳は誤学習します。
-
「ルールは絶対ではない」
-
「例外でも勝てる」
-
「自分はそれができる」
この誤学習が、次の大きな違反を正当化します。
4-3. 自信がピークのときほど、相場は“たまたま”逆側に振れる
相場は、人の心理と無関係に動きます。
だから、過信で張った瞬間に逆行が来ることが普通にあります。
その逆行を「損切り」で切れないと、一撃で終了します。
5. 典型的な崩壊シナリオ(現場でよくある流れ)
-
増えてきた。口座に余裕がある。
-
「今日は取りに行こう」と思う。
-
いつもよりロットを上げる、またはポジション数を増やす。
-
想定と逆に動く。
-
いつもの損切り幅だと損が大きすぎて切れない。
-
「戻ったら切る」になり、損切りが無期限化。
-
さらにナンピンや追加ポジで平均単価を動かす。
-
相場がトレンド化し、戻らない。
-
強制ロスカット、または精神崩壊で投げる。
-
口座が溶ける。
ポイントは、崩壊は1つのミスではなく、小さなルール逸脱が連鎖して“取り返し不能”になることです。
6. 防ぐ方法:必要なのは「意志」ではなく「仕組み」
ここまで読んだ方は、「じゃあルールを守ればいい」と思うはずです。
しかし、問題の核心はここです。
過信状態の自分は、ルールを守る意志そのものが弱くなる。
つまり、意志に頼ると負けます。
だから必要なのは、守れない自分が出てきても崩壊しない“仕組み化”です。
7. 崩壊を防ぐための完全ルールセット(実装版)
ここからは、そのまま運用に落とし込める形で提示します。
ルール1:1回の損失上限(R)を固定する
口座残高に対して、1回の最大損失を固定します。
-
目安:0.5〜1%
-
10万円なら:500〜1,000円
-
50万円なら:2,500〜5,000円
-
100万円なら:5,000〜10,000円
重要なのは、増えたら“気分で”ロットを上げるのではなく、
Rに合わせてロットを機械的に決めることです。
ルール2:逆指値(ハードストップ)を必ず置き、動かさない
-
入れない:禁止
-
広げる:禁止
-
消す:禁止
-
「戻ったら切る」:禁止
“例外”は、その1回が口座を破壊します。
ルール3:ポジション数の上限を固定(例:最大1つ)
あなたが書いた通り、
「普段は1つなのに、調子がいいから3つ」は崩壊の合図です。
-
最大ポジション数:1(推奨)
-
どうしても分割したいなら、最初から 合計Rが1R になるように設計して分割する
ルール4:ロットは「固定」ではなく「R固定」で運用する
一見、ロット固定は安全に見えます。
しかし口座が増えてもロットが同じだと、リスクが相対的に小さくなり、過信・油断を誘発する場合があります。
おすすめは、
-
リスク(R)を固定し、
-
ロットは 損切り幅に合わせて毎回計算する
という方式です。
(例:損切り10pipsならロットを小さく、損切り30pipsならさらに小さく)
ルール5:日次損失上限で強制終了(過信の暴走を止める)
-
例:1日 -2Rで終了
-
週:-5Rで終了
これがあるだけで「取り返しの崩壊」が消えます。
ルール6:節目ルール(資金が増えたときほど締める)
あなたのケースでは、節目(50万/80万/130万)で崩れます。
ならば節目に“締めるルール”を先に置きます。
-
口座が一定割合増えたら(例:+30%)、翌日から3日間はロットを下げる
-
口座が新高値を更新したら、その日は取引終了
-
大きく増えた週は、翌週のRを半分にする
「勝った後ほど守りを固める」仕組みが、あなたのパターンに直接効きます。
8. 自分が崩れ始めた“サイン”を言語化しておく
崩壊は、前兆があります。
前兆を見つけたら「取引停止」にするだけで救えることが多いです。
崩壊前の典型サイン
-
“今日は取れる”という確信が強すぎる
-
ルールが面倒に感じる
-
エントリーしたくてうずうずする
-
いつもよりロットを上げたい
-
ポジションを複数持ちたくなる
-
損切りが「もったいない」と感じる
-
取り返したい気持ちが出ている
このサインが出たら、その日は「守りのルール」に切り替える(またはやめる)と決めておくのが有効です。
9. まとめ:増やせる人が最後に負けるのは、才能がないからではない
10万円を増やせる人は、才能がないのではありません。
むしろ逆です。増やせるからこそ、勝ちが過信を生みやすい。
そして過信は、以下を起こします。
-
ロット増
-
ポジション増
-
損切り拒否
-
例外の正当化
-
“1回の事故”の巨大化
崩壊を止める鍵は、意志ではなく仕組みです。
-
最大損失(R)の固定
-
逆指値の徹底
-
ポジション数上限
-
日次損失上限
-
節目で締めるルール
これらを入れることで、「いつか必ず溶かす」ループから抜け出せます。
増やす力がある人ほど、最後に必要なのは“攻め”ではなく“守りの自動化”です。
あなたの最大の敵は相場ではなく、勝ったときに現れる「ルールを破る自分」です。









コメント