十数年前に仕事で神戸に出張をしました。訪問先の会社とはある大きな取引を私が発注したことから、付き合いが始まりました。
私が彼らの本社がある神戸に行くと大歓迎の接待となり、神戸の一流レストランや料亭でのもてなしがいつものことでした。
ある時の出張で一応の打ち合わせが終わった後に、「これから夕食でもいかがですか。今日は焼肉でも構いませんか」という誘いがあ
り、「ありがとうございます。」という挨拶の後に早速彼らの案内する焼肉屋に行く事となりました。以前叙々苑のような高級焼肉レ
ストランに連れて行ってもらった事があったので「またそこに行くのかな」と思っていたのですが、三宮駅近くのお世辞にも高級とい
うイメージではなく、ちょっとこじんまりとした小さな店に案内されました。予想通リ個室とかなく、幾つものテーブルが並んだごく
普通の庶民的な雰囲気。「エーこんな所」とちょっと不満な表情を浮かべていると、先方はそれを感じたのか「すいません。いつもの
ような所とは違って。実は本当に美味しい焼肉屋で普通の焼肉のイメージをひっくり返す味なので、失礼とは思いますが是非一度お連
れしたかった。」という説明。メニューを見ても別に特段変わったものもなく、まあ食べてみればわかると考えオーダーは先方にお任
せ。カルビ・ロース・ハラミ・タンという定番の注文。
まずはハラミということで、それを食べてみてビックリ。「何 この味は」通常焼肉のタレ味は醤油ベースに甘みのある香辛料の味で
すが、そこの味は何とソースベース、それもウスターソースのようなサッパリとした味に仄かな酸味がするタレ味。また焼肉に染み込
んだ味もやはりソース風味。斬新な味とその美味しさにただただ驚くばかり。しばらくするとレバー刺しの他にホウデンという牛の睾
丸の刺身や脳ミソの生も出てきました。本当に新鮮でないとこのような刺身は食べられないということで、まるでふぐの白子のように
濃厚でクリーミーな味。この店の経営は在日の韓国の方が経営しているとのことで、店の給仕はそこの3人の物凄く美人の3人の娘さ
ん。彼女達をからかいながら、この新しい味の焼肉を食べるとまあドンドンとお酒が進むこと。その店を出る頃には私は完全に出来上
がってしまい、さあ二件目の店にゴーという感じでした。
その後、その焼肉屋のことが気になりましたがなんという名前で住所がどこということを取引先に聞かずじまいで、その会社との取引
部門から私が移ってしまい、わからなくなってしまいました。個人的に神戸に住む友達に尋ねましたが、誰も知りませんでした。
一体あの店はどこにあり、今どうなったのか気になっています。ソース味の焼肉、想像できますか。何とかもう一度あの焼肉を食べて
みたいものです。