思い出のクラウン

私の父はクラウンが大好きで、車を新しく買い換える度にクラウンを選ぶ人だった。

おかげで小学生の時は、車を新しくしたんだと言われないと買ったのに気づかない時もあった。

私が高校を卒業する少し前に、そんな父が急逝した。

兄も母も自分の車を持っていたので

父の車は私が譲り受けることになった。

正直18歳の私にクラウンは不相応だし

もっと可愛い色と形の車に乗りたかった。

でも大好きだった父の車なので、傷つけることなくとても大切に乗っていた。

運転することにも慣れて、4年が経った頃に

クラウンは購入してから7年目になっていた。

若干クラウンに飽きてきて、他に車が欲しいなと思ったりもしたけれど、

「父の車」ということで、どうしても手放すことが出来ずにいた。

ある時、兄がクラウンを貸してくれと言ってきた。

兄の車は二人乗りのBMWのオープンカーなので、出かける時の人数によっては私のクラウンを運転することがあった。

何度も貸し借りしていたので、その時も抵抗なく貸した。

その翌朝早朝、兄から着信…。

「ごめん、事故っちゃった」と。

兄に大した怪我はなかったものの、車は廃車することになった。

父の思い出のクラウン。

父から譲り受けた形のある物。

物凄く泣いて、兄に怒りをぶつけた。

兄も私の気持ちが分かるので、物凄く申し訳なさそうにしていた。

買い換えたって意味がない。

あのクラウンじゃないとダメだと駄々をこねた。

結局車はクラウンではなく、別の車に買い換えた。

譲り受けた車は無くなってしまったが、父がクラウンを買い換える度に使っていたナンバーだけは今も受け継いで乗っている。

兄とは自然にまた会話をするようになったが、車は二度と貸さなくなった。